2013年4月26日金曜日

GW直前


 細々と続けているこのブログですが、4月24日にあけてみたら、総アクセス数が2,222件のぞろ目になっておりました。読んでくださっているみなさん、ありがとうございます。何のお役に立つとも思えませんが、面白がっていただけたら嬉しいです。

 明日からのゴールデンウィークを前に、いろいろと忙しい週でした。
 メインイベントは、去年研究助成金をいただいた財団の研究成果報告会。私にとっては、空っぽだったラボで始めた仕事を軌道に乗せるきっかけとなった研究費を出していただいた、恩人ならぬ『恩法人』、長瀬科学技術振興財団への成果報告をする会です。一緒に助成金をいただいたほかの研究者の一年間の成果とともに来年度の助成金を受ける方々の研究計画についていろいろお伺いする機会でもあり、いろいろと刺激を受けた一日でした。
 

  いまだに現在進行中のプロジェクトで、まとまった成果を発表するところまで行かなかったのが本当に残念なのですが、研究助成期間は終わっても、当然私たちの研究は続きます。そもそも、ヘテロシグマ、という生物を分子生物学者が扱おう!という試みは、私たちが最初なワケで、そんなに簡単に行くわけもない、というところがあり。
 せっかく発表会で受けた刺激が消えてしまわないうちにと、ゴールデンウィークもチョコチョコ仕事をしてしまうと思います。
 

 という、実験がらみの一週間が過ぎていくのとは別に、今週は研究所の、『れんげつみ』週。この研究所の近くの幼稚園・保育園を招待して、圃場のれんげを思う存分摘んでください、という恒例行事です。
 先週のブログにも載せましたが、研究所の水田は、綺麗なピンクのじゅうたんになっていました。・・・・・で、園児たちがやってくると。

(左)先週のれんげ畑、(中央)月曜日朝、(右)火曜日午後。ピンクのじゅうたんが踏みしだかれているのがわかりますか?全部で20チーム以上がやってくるので、それぞれが思う存分遊べるようにと広い圃場を圃場担当の教授が毎年区切ってくださるんです。で、それぞれの場所に園児たちがやってきて、思う存分遊んだ跡は、このように・・・・。

 思う存分お花を摘んで、走り回って・・・・・・・の後は、ピンクのじゅうたんが綺麗に緑に色変わり。一人ひとりのあんよは小さくても、園児たちの破壊力、おそるべし!!!です。
 


2013年4月19日金曜日

最近の実験

 新年度からHさんがフルタイムになってくれましたので、彼女にはプロジェクトをひとつお願いしました。
 ウイルスがもっているある遺伝子の配列のバリエーションを見ようというもの。ある一種類のウイルスに限ってみても、実は遺伝子の配列を調べるといろんなタイプがあります。そう、毎年話題になる「新型インフルエンザウイルス」、あれだって、インフルエンザ、というウイルスに新しいバリエーション=新型が生じた、という話題なわけです。インフルエンザの場合には、ヒトが感染したときの症状が劇的に変わってしまうほどの『変異』がはいって、新型インフルエンザ大流行、となるわけです。
 いま私たちが手がけているのは、ヘテロシグマに感染するウイルスの持つ遺伝子をつってきて、これにバリエーションがないかを見てみよう、という実験です。バリエーションがあるかどうか、というのを調べるには、ある1種類の遺伝子をたくさんとってきて、互いに同じかどうかをひとつひとつチェックしなければなりません。バリエーションがある、といっても、100残基のDNAのうち、20も30もが違うのならば話は簡単ですが、実際には、私たちが探しているこの場合のようなバリエーションはもっと低確率でおこるもの。
 根気強く同じ実験を繰り返して、たくさんの結果をきっちりと整理して、はじめて全体像が見えてくる、というタイプの仕事。実験操作が丁寧で、間違いがないHさんにお願いして大正解。
 というわけで、彼女はここしばらく遺伝子を例のPCR法で釣り上げて、それを保存・増幅が便利な形にクローニングすると同時に、その一つ一つの配列を解読して解析する、という作業をしてもらっております。

実験室窓から。5月末には水田に変る圃場は、ただいまレンゲ
ソウが満開です。桜と入れ替わりに、毎日少しずつピンク色が
濃くなっていくのを眺められるのはなかなか幸せです。
その一方で、私はヘテロシグマから核酸を大量抽出するための準備中。・・・・というのも、以前外注したヘテロシグマの遺伝子配列解読が、思ったよりもうまくいっていなかったらしく・・・。似た実験をもう少し追加しなければならないようです。
 おカネもかかるんだけどなぁ・・・・・・・ 追加で60万円。(;_;)(;_;)(;_;)(;_;)涙ぽろぽろ、であります。
 ま、泣き言を言っても始まらないので、粛々と高品質な遺伝子を抽出すべく実験しております。

 他にも、「これができたらうれしい!」実験法をヘテロシグマで確率すべく、日々試行錯誤中。なかなか結果が出ない、というのは、当然ストレスがたまるものでもありますが、これも淡々と少しずつ条件を変えて結果を見て、を繰り返すしかありません。
 やった~~!できた~~~!!を夢見て、毎日
トライアンドエラーを繰り返しております。 

 
 


2013年4月12日金曜日

週に一回

 これまでは、研究あるいはその周辺についてばかり書いてまいりましたが、今日はちょっと違う話題を。

 岡山大学資源植物科学研究所、の前身は、「大原農業研究所」。倉敷を訪ねたことがおありの方でしたら、「大原美術館」をご存知かもしれません。この、大原美術館の創立者である大原孫三郎氏(1880年 -1943年は倉敷紡績の経営者だったわけですが、この方は社会福祉にも強い興味を抱き、その方面でも数々の実績があります。たとえば、当時の日露戦争で急増した孤児のために孤児院を設立。加えて、経営する会社である倉敷紡績の工場内に尋常小学校を設立、また、働きながら学ぶ工員の教育をサポートするために設立した倉敷商業補修高校は、現在はスポーツが強い倉敷商業高校となり、野球部は甲子園に出場したりしております。さらに、工員たちの健康管理を目的に倉紡中央病院(現在の倉敷中央病院)を設立するなど、実は、現在倉敷に生活する私たちも、彼が行った社会貢献の恩恵にしらずしらずのうちに浴しているわけです。

 さて、この大原氏が倉敷周辺の農業の改善、ひいては農民の生活向上をはかるべく、当時最新鋭の機器を導入して、優秀な研究者をリクルートして創立した研究所が、当研究所の前身、大原農業研究所なのです。倉敷という小さな地方都市に、このように影響力の強い篤志家が存在した、というのは、珍しい、そして素晴らしいことだと思います。倉敷に移ってきたばかりのころ、大原家の話をあちこちで伺い、シンプルに感動いたしました。・・・・そして、実は、大原家は今でも当研究所の強力なサポーターでいてくださるのです。
 大原農業研究所の創立は1914年、つまり、来年2014年は当研究所の100周年記念(まだ英語版のページしかありませんが、そのうち日本語版も登場します)に当たります。1954年から岡山大学に移管されて、大学附置研究所となり、幾度かの改組・改名をへて、現在の「岡山大学資源植物科学研究所」となったわけです。

 と、大変長い『前ふり』でしたが、今日のブログの本題はここから、です。
 このようにいろいろと歴史のある研究所なのですが、一つ、問題、いえ、特徴が。

 建物が古い。

 ふるいといっても、もちろん100年前の建物が残っているわけではなく、研究棟はすべて岡山大学に移管されたのちに、国立大学の予算から建築されたもの。一番古い棟は昭和30年代築。冬は寒く夏は暑く、免震構造はもちろん当時のもので・・・・などなど、いろいろ問題はあるのですが、私個人は、外見は昭和30年代風、しかし設備はなかなか充実、というその落差を実はとても気に入っています。
 改築の話も出てはいるのですが、いまのところは、この建物を大切に使って研究しましょう、ということになっています。

 とはいえ、昭和30年代から積もったほこりは、並大抵のものではありません。
 岡山大学の一部とはいえ、メイン・キャンパスにある建物でないと、どうもお掃除のための経費などは多少控えめにしか回してもらえないようです。
研究所の中でも一番古いということになっている部分。手前は、
夏の間は水田=実験圃場となります。この建物、私の中では
昭和40年ごろの小学校かはたまた保健所、というかんじ・・・。
とはいえ、春はレンゲソウ、夏は水田(カエルがいっぱい!)を
実験室の窓から眺められるのは、ぜいたくな気分です。
というわけで、研究所の助教の一人が旗振り役で、毎週木曜日の朝、15分から30分ずつ、有志でお掃除をすることに。
 そりゃね、高額予算がついた研究所、新しい研究棟は空調完備、掃除なんてことはすべて業者さんに委託して・・・・というのがある意味の理想なのでしょうけれど。でも、週に一度だけ半時間ぐらい、こういうことに時間を使うのも、悪くない気もします。
 そういえば、昔小中高校にいたころは、掃除の時間ってあったじゃないですか。子供たちがするならば(大人がさせるならば)、大の大人が同じことをして、ナニわるかろう。

 私自身がなんといっても感心したのは、旗振り役が出したメールに応じて、結構な人数が参加して働いちゃうこと。旗を振ってくださった方のご人徳、という面はあるにしても、こういうのって、ほんと、日本人特有。13年近くの滞米中に、米国人だけでなく、中台露仏韓英伊独・バングラデッシュ・ボリビア・メキシコ・ブラジル・マレーシア・ウクライナ・カザフスタン・スペイン・イスラエル・パキスタン・インド・香港・クウェート・スウェーデン・トルコ・ベトナム人たちと一緒に働く機会に恵まれましたが、その経験を持って断言させていただきます。

 というわけで、最近は、雑巾・ほうき・スポンジその他掃除に役立つものを片手に、毎週木曜日朝は30分ほど、有志であちこちを磨いております。5月11日は当研究所の一般公開。きれいにして、たくさんの方たちに来ていただきたいものです。
 
 
 

 

2013年4月5日金曜日

4月5日 新年度です。


 新年度あけましておめでとうございます。

 ・・・・なんていう言葉はありませんが、桜の咲くこの季節、新しい仕事年度が始まる、というのは、改めて背筋が伸びる思いがするものですね。
    考えてみれば、こちらに着任したのは2011年9月1日でしたので、ここで仕事を始めて1年と7ヶ月になります。まさにゼロからの立ち上げというのは、振り返ってみればなかなか得難い経験でありました。月日はたち、不自由なく実験できる環境が整って、毎日楽しく仕事ができるのはありがたいことです。

 さて、新年度とともにひとつ、うれしいこと。これまで、週に2日来てくれていた非常勤技術職員のHさんが、この4月1日からフルタイムでうちのグループで働いてくれることになりました。ということで、フルタイムメンバーが二人になりました。これで、やっとのことで、「グループ」を名乗ってよろしい、という感じですね。Hさん、今年度一年間よろしくお願いします!

  というわけで、新年度の当グループの目標は、「より働きやすいラボ環境を整備すること」、そして当然、「面白いデータを得ること」。本年度もよろしくおねがいします。

先週載せたのと同じ、中庭の桜。今週初めに、満開になりました。